星空についてのぽらりすの思い

光害について

光害という言葉を知っていますか?
あまりなじみがありませんが、今、世界的に問題になっている公害の一つです。
ぽらりすの、この地域の星空を守りたいという思いをご紹介します。

守るべき星空がここにある

星空を守るということは、どういうことでしょうか?
守られていない星空とは?と、考えるとわかりやすいかもしれません。
都会の真ん中では、天の川を見ることはできません。
ちょっと郊外に出たくらいでも見えないでしょう。
しばらくクルマを走らせて、街明かりの影響が少ないところまで行けば、天の川を見ることができます。

今、日本の人口の70%が、天の川を見ることができない場所に住んでいるそうです。

天の川を見ることができる30%の人口。
この皆さんが見ている天の川は、どこでも同じものでしょうか?

都会では天の川が見えないのと同じように、ちょっと暗いところに行って見る天の川と、真っ暗な、例えば、人里離れた山の中へ行って見る天の川では、見え方が違ってきます。
周りに明るいものがなく、暗い小さな星まで見えるところでは、天の川の美しさが、さらに際立ちます。

弟子屈町は、日本でも「トップクラスの天の川」が見られる場所です。
言葉の意味をかみ砕くと
・天の川がきれいに見える
・星がきれいに見える
・数多くの星が見える
・暗い小さい星まで見える
さらに
・空が暗い
・街明かりが空を照らさない
といった表現が、すべて同じ意味になってきます。
釧路・網走・北見といった大きな都市から数十km離れた弟子屈町は、多くの人がそこで暮らしていながら、空が暗いという、恵まれた立地なのです。

もう一つ大事なことは、
・空気がきれい、澄んでいる
ということが必要です。

町域の半分以上が、阿寒摩周国立公園に属している弟子屈町は、自然豊かな環境で、大きな工業団地からも遠く、きれいな空気が保たれています。

星空の美しさを測る方法はあるの?

星空の美しさを比較するのは、専門的な装置を使わない限り、それほど簡単ではありませんでした。
環境省では、1988年より、大気汚染や光害の影響を調査するため、全国的に希望者参加型の星空調査を行っています。
決められた条件で写真を撮影し(当時はフィルムカメラ)それをパソコンで読み込んで数値化していました。
簡易的な方法では、例えばオリオン座のどの星まで見えるかなど、アナログな方法も用いられてきました。
2012年ころから、普及してきたデジタルカメラを用いる方法が確立され始め、デジカメ星空診断として、客観的なデータがとれるようになってきています。
https://www.env.go.jp/air/life/hoshizorakansatsu/observe-4.html
 

どんな測定値が出るの?

測定値の一例です。
ここでいう、21.6や22.0が測定値です。
単位は、「mag/arcsec2」です。難しいですね。
mag :等級 (1等星、2等星、という等級です)
arecsec2:空の平方秒という意味です。
ちょっと大雑把な言い方をすると、「空の明るさは何等星」という数字です。
星がない、暗いところの空の明るさが、等級で表現されています。
なので、弟子屈の空の背景は22等星くらい。ということです。

弟子屈町の星空はきれいなの?

では、他の地域と比べてどうなんでしょうか?
上記の方法で、2018年頃より、ぽらりすではデータを蓄積してきています。
各地のデータを比較してみました。

※一発データの比較なので、これだけを見て絶対的な評価は難しいことをご理解ください。
 
ぽらりすと、摩周湖が弟子屈町のデータです。
表のデータからいえることは・・・
・北海道内の天文台があることろと同じような空の暗さである。
・本州の星空観光を目玉にしている地域よりもかなり星が見える。
・絶海の孤島はもっとすごい。
ということです。
もうひとつ、
・胆振東部地震で停電になった時の測定値から、天頂付近については、停電でも変化がないくらい、常日頃から美しい星空を見ていた。
ということがわかりました。
 
人里離れた山奥や高い山の上など、人が住んでいないところに行けば、きれいなところはたくさんありますが、弟子屈のように人がたくさん住んでいて、観光地でもあってという場所で考えると、国内トップクラスの星空といってよいと思います。

星空を守る必要があるの? きれいならばいいじゃないか!

ちょっと前までは、星空を守るということがそれほど大変ではありませんでした。
というのは、照明を増やせば電気代がかかるからです。
省エネルギーという命題のもと、余計な照明を増やさないことは、世の中の大きな流れに沿ったものだったのです。
 
しかし、LED電球の普及にしたがって、そこには意志が必要な状況になっています。
電気代が安くなり、照明を明るくすることに抵抗がなくなっているのです。
近年では、光害が毎年10%増えているという研究もあります。(2023/1/19 サイエンス誌掲載 ドイツ地球科学研究センターの研究)
 
弟子屈町も例外ではなく、星が見えにくくなっている傾向があります。

星が見えないだけなんでしょ

過剰な光による悪影響は、すでに過去から懸念されていて、1998年に環境省が「光害対策ガイドライン」という文書を発行しています。
2006年と2021年に改訂され、現在に至ります。
 
過剰な光は、どんな悪影響があるのでしょうか?
大きく、5つの影響があると言われています。エネルギー問題、動物・昆虫など、植物、人間、天体観測の5つです。(西表石垣国立公園 環境省資料より)
https://www.env.go.jp/park/iriomote/data/index.html

世界的にも、光害の影響を問題視する流れが生まれ始めていて、ワシントンDCのスミソニアン博物館では、2023年3月より、光害に関する展示が行われています。
 
https://www.si.edu/exhibitions/lights-out-recovering-our-night-sky:event-exhib-6676
 
サステナブルというキーワードで考えた場合、消費電力が少なくなっても、過剰な照明は悪影響を無視できないという新しいフェーズに入ってきているということだと思います。

星空を守るってどうすればいいの?  真っ暗は危なくないの?

ここで大切なのは、「必要な光は消さなくてよい」ということです。
安全を損なってまで、暗くしようということでは、まったくありません。
 
照明の種類や使い方で、必要なところは明るくしたまま、無駄な光を減らすことができるのです。
 
光害対策ガイドラインより

https://www.env.go.jp/air/life/hoshizorakansatsu/observe-5.html

https://www.env.go.jp/air/life/hikarigaitaisaku.html

野外照明の5原則が提唱されています。

具体的には、どんなアクションが必要?

「ひとりひとりの心がけ」、ではなかなか地域全体として変わってゆくことはできないでしょう。
行政も含んだ体制で、照明の更新、運用の改善などを進める必要があると思います。
光害に対して、町民が意識してゆくようになるには、継続的な啓蒙活動も必要になるでしょう。
周知徹底という意味では、「条例化」も有効な手段であると思います。設置する野外照明に制限を設けたり、窓から漏れる光に対する注意喚起など、条例の制定は大きな効果をもたらすでしょう。

自然保護以外に、具体的なメリットはないの?

ここで、一番初めの「星空を守る」というところに立ち返りましょう。
光害を対策し、守られた星空は、どんな価値があるでしょうか?
日本人の70%は天の川が見られないところに住んでいるということも書きました。
 
とびきりの天の川は、非日常を体験できる、観光資源になりうるのです。
 
実際、弟子屈町では10年以上前から、「摩周湖星紀行」というローカルツアーが人気を博していました。
他にはない星空を見せることができれば、それは大きなメリットになります。
 
このほか、電力消費が照明の変更前から半分以下になったという地域もあります。

観光という側面だけでなく、地元の住民にとっても、きれいな星空が見られるということにマイナス要素は見当たりません。

星空保護区というもの

ここまで書いたような活動を行う上で、目標になりうるのが、「星空保護区への登録」です。

星空保護区とは

国際ダークスカイ協会が、申請した地域に対して
・光害対策が実施されていて、星がきれい
・星がきれいな状態が保たれるような条例なりがある
・光害についての、観光客や地元の人たちに対する教育プログラムがある
・星空を活かす観光プログラムがある
・光害対策について、地域住民や企業との協力関係がある。
といった内容で審査し、認定する制度です。

その地域が、光害対策を実施している必要があり、ダークスカイ協会が何かをしてくれるわけではありません。

星空保護区への登録を目指すことで、条例の制定、地域住民や企業への啓蒙などをするための目標を明確に設定できるということになります。

現在、世界各地に200カ所超の認定地があり、日本には3カ所あります。
さらに、もう一カ所2023年度の申請準備中です。

日本の星空保護区
・西表石垣国立公園(沖縄)
・神津島(東京)
・美星町(岡山)
準備中
・大野市(福井県)

星空保護区になるメリット

前段で、観光資源になりうると書きましたが、光害対策の努力を積み重ねても、訴求効果というのは自己PRの域を出るものではありません。
国際ダークスカイ協会の認定を得ることができれば、世界的なお墨付きをもらうことになり、全世界に訴求することができます。

星空保護区になることによって、世界各地の観光地では、星空ツアーの会社が5倍になった、国内のお客さまが増えた、観光シーズンが長くなった、などの変化がもたらされています。

観光を一つの柱とする、弟子屈町の経済活動を活性化してくれることは、疑う余地はありません。

弟子屈町を星空保護区に

観光が一つの柱であり、国立公園を町のうちの大きな部分占めている弟子屈町において、星空保護区を目指すことは、非常に有効な施策であると考えられます。

メリットを羅列してみました。

・観光訴求力がUPできる
・動物・昆虫・鳥類・植物の保護につながる
・繁忙期以外の集客につながる
・サステナブルな取り組みを内外にアピールできる
・電力消費を抑えられる


そして何より、今ある素晴らしい星空を、後世に残すことができる。
これが、いちばん大切なことだと思います。

長文を最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

弟子屈を星空保護区に登録することを目指して、「てしかが星空愛好会」を発足しました。
こちらのページにもぜひお越しください。

日々の進捗などは、noteにて発信しております。
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2023/6/1